労務・人事

 

中国企業の日本進出と労務問題

 

近年、中国企業や中国の投資家が日本に直接投資を行い、日本に中国資本の現地法人を設立するケースが増えてきています。

 

そして、このような中国企業の日本進出に伴い、中国系企業が日本で人を雇い、労働契約を締結するという場面も増えてきています。

 

当事務所が中国企業向けに中国語でのサービス提供を行っていることから、中国企業が日本に進出して労働契約を締結しようとする際に、労働契約書や就業規則の作成についてお問い合わせをいただくことがあります。

 

また、日本に住んでいる中国人の方が日本で会社を設立し、商売をされている場合にも、同様に日本において雇用を行い、労務問題が生じてご相談を受けるということがあります。そのような場合に、労働契約や就業規則がしっかりしておらず、その見直しなどについてご相談を受けることがあります。

 

中国企業経営者のやってしまいがちな労務に関する間違い

中国企業経営者のやってしまいがちな労務に関する間違いの1つ目は、中国式の労務管理の考え方をそのまま日本に持ち込んでしまうというパターンです。中国における中国法を前提とした労務管理が、日本における日本法では認められていないということがあります。たとえば、中国では有給の買取が法律で認められていますが、日本では認められていません。また、中国の労働契約法では労働契約の終了時に経済補償金の支払いという制度があり、その金額の計算方法も法律で明文化されていますが、日本には経済補償金の制度はありません。逆に日本では退職金の制度があったり、違法解雇の場合の解決金についても法律で明文化されていないという違いなどがあります。

 

2つ目は、家族的な付き合いとして労働者に様々な利益を提供するものの、それが契約に基づくものとは評価できず、証拠も残されておらず、労働法の観点からは労務管理のやり方が甘くなっているというパターンです。そのような場合、人間関係が悪化した後で労働審判や裁判を起こされてしまうという場合が散見されます。

 

中国系企業が知っておきたい日本の労務問題の注意点

まず、日本と中国とでは、労働者が会社で給料をもらって働くということの社会的な意味が違う、という国情の違いに注意すべきです。

 

具体的には、日本では依然として終身雇用の考え方が主流であり、日本人の多くの会社務めの方は、社員として働く給与により、自分の人生設計を立てるという考え方で会社に勤めています。給料の平均的な金額も中国に比べると高いです。日本人の多くは、一つの会社にできるだけ長く務めている人間の方が優秀であると考え、頻繁に転職している人間には何か問題があるのではないかという見方をされるのが一般です。また、日本人は、企業理念や働きがい、働きやすさなど、給料の金額以外の要素も重視する傾向があります。

 

こうしたことから、法律上、労働者保護が要請されているという点では中国も日本も同じであるものの、日本で労務問題のトラブルが発生すると中国以上に重たい問題になることがある点に注意が必要です。

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